ソニーより発売された、Android OS搭載の超短焦点プロジェクター「Xperia Touch」が研究室に届きました!使ってみた感想など、レビューしてみました。
2016年にソニーより超短焦点プロジェクターとして「LSPX-P1」が発売されました。謳い文句の通り、その特徴は焦点距離の短さ。通常のプロジェクターは、スクリーンに映像を移そうとするとどうしても数mの距離をとる必要がありますが、「LSPX-P1」はスクリーン際に密着させても映像を映すことができます。また、「LSPX-P1」が対応する最大投影サイズの80型でもわずか28cmの距離で映像を映すことが可能とのこと。
個人的には「これはすごい!」と当時驚かされたものですが、今回研究室に届いた「Xperia Touch」は、その超短焦点プロジェクター「LSPX-P1」にAndroid OSを搭載したAndroid端末になります(厳密にはLSPX-P1とはプロジェクターモジュールが異なるみたいですが)。もちろん、投影したスクリーン上でタッチ操作が可能ですし、外部映像入力もありプロジェクターとしても使用可能。
では、前置きも程々に早速実物とご対面。
- Xperia Touch(本体)
- ACアダプター
- 取扱説明書
- スタートアップガイド
- 保証書
前面。デザイン的に黒で統一されていて分かりづらいですが、下部に赤外線、中央より上部のところに投写窓があります。
上面には、電源ボタンや音量ボタンをはじめとする基本的な操作系とカメラが配置されています。
背面。下部の奥まったところにUSB Type-C接続端子とHDMI Type D接続端子があり、上部にmicroSDカードトレイが備わっています。
側面はメッシュデザインになっていますが、前面から見て左側の側面が呼気口、右側の側面が排気口の役割を果たしているようです。
最長部で約14.2cm(実測)とサイズ的にはかなりコンパクト。比較用に右側に置いてあるのは5.2インチディスプレイ搭載の「Xperia XZ」。
基本的には横向きのワイド画面(16:9)で、机に「Xperia Touch」を置いた状態なら約22~23インチの画面サイズで投影できます。投射方式はSXRD(反射型)。これだけ大きいとタイピングも楽です。ちなみに、この状態で本体から投影映像までの距離は約9cm(実測)。
また、驚かされたのはタッチ精度。机表面から3mmほどのところに赤外線をだし、指の反射をイメージセンサで読み取っているとのことですが、画面の隅々まできちんと反応してくれます。これには栗原先生含め、メンバー一同うならされました。通常用途ではレスポンスも問題なし(とあるメンバー曰く、サイズの関係もありリズムゲームはちょっと厳しいとのこと)。
気になる人もいると思うので、申し訳程度に某リズムゲーム(デレステ)のプレイ映像も低品質gifで載せときます。グラフィック設定は「3D標準」ですが、傍から見ている分には特に問題なく軽快に動作しているように見えました。
投影輝度についても十分。上画像は、「Xperia Touch」の真上にあった照明を点けての撮影ですが、普通に視認可能でした(ACアダプター駆動、画面輝度は最大)。
プリインストールされているアプリ一覧(「THETA S」と「MARIO RUN」は研究室メンバーが追加)。
本体を縦に置き、壁際から離せば大画面に(最大80インチ)。台形補正も画面投影時の一瞬で行ってくれます。ただし、既述の通り赤外線は本体前面の下部3mmのところから照射されているため、映像を投影した場所はタッチスクリーンとしては機能しません。
システム上仕方のないことですが、タッチスクリーンとして利用するには、机あるいは壁に密着させることが不可欠で、スクリーンサイズも23インチに限られます。
あと、大画面で投影したときに気になったのは歪み(画像上部)。本製品が“純粋なプロジェクター”として発売していないのが救いですが、正直プロジェクターとしてはちょっとイマイチな印象です。どんな補正処理を行っているのか気になるところ。加えて、冒頭でふれた、同社が“純粋なプロジェクター”として発売している「LSPX-P1」の仕上がりも逆に気になりますね。
とはいえ、「Xperia Touch」を使用すれば、
机の横のちょっとしたスペースがタッチスクリーンに早変わりという新鮮さは、先に述べた不満を忘れさせるほどに感じました。見た目がオシャレになるというオマケ付きですし。
さて、ここまで主に「Xperia Touch」の個性・目玉機能についてふれてきましたが、Android端末として見た場合の評価もちょっとだけしたいと思います。まずは簡単なスペック紹介から(詳細な仕様はこちら)。
プロセッサ | Snapdragon 650(ヘキサコア) |
メモリ(RAM) | 3GB |
ストレージ(ROM) | 32GB |
外部ストレージ | microSD / SDHC / SDXC(最大256GB) 対応 |
Wi-Fi | IEEE 802.11a / b / n / ac |
NFC | 搭載 |
Bluetooth | Bluetooth 4.2 |
センサー | マイク / 加速度 / 地磁気 / GPS / ジャイロ / 照度 / 気圧 / 気温 / 湿度 / 人感 |
解像度 | 1366 × 768 |
カメラ | 13.2MP |
バッテリー | 1200mAh |
OS | Android 7.0 |
「Xperia X(2016年2月発表)」や「Xperia X Compact(2016年9月発表)」にも採用されているプロセッサを搭載し、メモリ3GB、解像度HDと全体的にみて所謂ミッドレンジモデルなスペックとなっています。内臓バッテリーはかなり少なく、駆動時間は公称でも約1時間なので、基本的には据え置きとしての利用を想定しているようです。
定番ベンチマークアプリも走らせてみました。
「Antutu Benchmark(Version 6.2.7)」の結果(2回計測し、高いスコアを採用)。手元にある「Xperia Z5 Compact(2015年9月発表、「Snapdragon 810」搭載)」のスコアは75640だったので、総合スコアで比べれば「Snapdragon 650」から見て1世代前のハイエンドモバイル向けプロセッサを搭載する端末の性能を上回っていることになります。
ただ、詳細なスコアを見ると、「Xperia Z5 Compact」の3Dスコアは26956、対する「Xperia Touch」のスコアは17826とグラフィックス性能はかなり劣っているのが分かります(UX画像処理スコアは「Xperia Z5 Compact」が6258、「Xperia Touch」が6091でした)。逆にいえば、GPU系を除くCPU処理及びRAM周りで順当な性能アップが施されている印象です。
「3DMark(Version 1.6.3439)」の「Ice Storm Unlimited」モードの結果(1回計測)。同型プロセッサを搭載する「Xperia X Compact」のスコアは19604らしいので(source)、スコア面での端末差は感じられず。ただ、ベンチマーク中の温度は少し低くなっているようですし、CPUの動作クロックも比較的安定しているように見えます(あくまで発表当初の「Xperia X Compact」との比較であり、その後のチューニングによって現在では両機種とも同様の動作結果になる可能性があります)。また、今年4月後半にソニーストアで展示されていたデモ機ではスコアは16650だったことから(source)、製品版では何かしら最適化が施されているのかもしれません。ちなみに「Sling Shot Extreme」モードでのスコアは881でした(1回計測)。
「3DMark」はグラフィックス性能の影響が大きいスコア算出となっており、「Xperia Z5 Compact(Snapdragon 810)」で同アプリを用いて計測した際スコアは27617だったので、「Antutu Benchmark」の結果同様「Xperia Touch(Snapdragon 650)」はグラフィックス性能が弱いという印象です(CPU性能が影響するPhysicsスコアは「Xperia Z5 Compact」が13733、「Xperia Touch」が13939でした)。
もう少しだけ言うと、「Snapdragon 810」ではGPUに「Adreno 430」を搭載しており、その演算性能は半浮動小数で最大420GFLOPS、一方の「Snapdragon 650」が搭載するGPU「Adreno 510」の演算性能は同じく半浮動小数で180GFLOPSなので、その差がモロに出た感じです。ただ、スコアが低いといっても、一般利用では十分な性能を持っているので、ほとんどの場合体感での差はないかと思います。
まぁ、このあたりの話は「Xperia Touch」云々ではなく、搭載するプロセッサ「Snapdragon 650」の評価になるので、去年辺りに似た内容の記事が多く出回っていたのではと思います。
最後にまとめ。
ファーストインプレッションとしては「とにかく未来感が凄い」。それまで普通に見ていた何の変哲もないテーブルや壁がタッチスクリーンになるのは面白い感覚があります。また、「Xperia Touch」に採用されているテーマ(UI)は、背景カラーが無色でテーブルの模様がそのまま活かされており、見た目の新鮮さという意味でもニクいところ。
タッチ検出に関する原理は目新しいものではないですが、自分が想像していた以上に精度が良く本当に驚かされました。もちろん、システムの性質上、スクリーンとなる場所に障害物や凹凸がないなどの制約はありますが、それでも実用的に使えるレベルに仕上がっているのはすごい。また、このタッチスクリーンを可能にしている超短焦点プロジェクターの存在も大きく、その技術にも感心させられます。
Android端末としては普通のミッドレンジモデルで特筆する点はありませんが、プロジェクターと一緒にコンパクトに収まっているのも良い点。コンパクトで設置がお手軽でなければこれ程の新鮮さは感じないと思うので。個人的には「プロジェクター自体も発熱するだろうによくまとめたな」という感じです(だからこそミッドレンジ向けプロセッサを採用しているのかもしれませんが)。
マルチタッチは最大10点に対応していること(プロジェクター側から見て前後に重なるようなタッチは検出できませんが)、各種センサーがきちんと搭載されているなど、基本的な性能はしっかりと詰まっており、搭載するOSも普通のAndroidなので、アプリ開発が捗りますね。
当研究室でも、この「Xperia Touch」の新鮮さに合うような独創的なアプリケーションを研究の傍ら開発していきたいと考えています。また、お値段が約16万円(税込)なので個人では中々手が出せないけど、触れてみたい、「Xperia Touch」を活かしたアプリを開発してみたいと考えている意欲ある学生は、当研究室を是非訪ねてきてください。
今月(2017年7月)の29日と30日には高知工科大学(香美キャンパス)のオープンキャンパスが予定されています。今年は「Xperia Touch」を活用したデモを展示する予定はありませんが、「Xperia Touch」自体は研究室設備品として触れてもらえるような形式にしたいと考えていますので、オープンキャンパスに来られた際には学生さんに限らず是非当研究室に立ち寄って頂けたらと思います。
[記事作成:B4 北代]